肝炎とは
肝臓が炎症を起こしている状態を肝炎と言います。その原因は主に肝炎ウイルスに感染することで発症すると言われています。主に急性肝炎と慢性肝炎に分類され、急性肝炎を発症し、その肝炎ウイルスをうまく駆逐できなかったという場合に慢性肝炎になりやすいです。なお肝炎ウイルスはA~E型まで5つのウイルスが存在するとされ、そのうちB型とC型については、慢性肝炎になりやすく、これらは日本人が一番感染しやすいタイプでもあります。ちなみにA、B、E型には予防のためのワクチンがありますが、C、D型にはありません。
主な症状は発熱、食欲不振、倦怠感などで、さらに悪化すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)のほか、右上の腹部(肝臓がある位置)に痛みが現れることもあります。
また感染経路につきましては、A型とE型については、水や食べ物を介して感染することが多く、B、C、D型については、血液や体液を通じて感染すると言われています。
主な肝炎について
B型肝炎
B型肝炎とは
B型肝炎は、乳幼児で感染するケースと成人になってから感染するタイプがあります。前者の場合は母子感染です。この場合は、B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアを持つ母親からの垂直感染もありますが、家族内での水平感染も考えられます。一方の後者は、性的接触、医療関係者などの針刺し事故、輸血、臓器移植、刺青、注射の打ち回しといったことが原因になります。
なお乳幼児は、免疫反応が完全に備わっていないことから、この時期に感染してしまうとHBVを排除しにくく、慢性化しやすい状態になります。そして慢性化すると自覚症状が現れるようになって、成人後に肝硬変や肝がんといった病気を発症しやすくなります。ちなみにB型肝炎ワクチンは、乳児を対象とした定期接種となっています。これを受けることで感染の予防対策となりますので、必ず接種するようにしてください。
また成人後に感染した場合ですが、初めて感染した時期や健康状態によって異なるとされ、人によって一過性感染(急性B型肝炎:自覚症状(倦怠感、食欲不振、嘔吐、黄疸など)が出ますが、出ずに治ってしまうこともあります)で済むケースもあれば、感染が半年以上持続する持続感染に至ることもあります。持続感染の場合はB型慢性肝炎(自覚症状は出ません)と診断されます。慢性化してしまうとこの場合も肝硬変や肝がんを発症するリスクが高まります。
治療に関してですが、急性B型肝炎の場合は、安静や栄養補給といった保存的治療が中心です。またB型慢性肝炎と診断されると、抗ウイルス療法(インターフェロン、核酸アナログ製剤)が行われます。
C型肝炎
C型肝炎とは
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで感染する病気ですが、主な感染経路は血液感染(針刺し事故、輸血、注射針の使い回し、臓器移植 など)です。肝炎ウイルスはC型を含め5つのタイプがありますが、その中で最も慢性化する確率が高いと言われています。
急性C型肝炎の場合は、倦怠感や発熱、食欲不振といったものがみられることがありますが、症状は非常に軽いと言われています。ただ急性C型肝炎が治まったとしても、70%程度の方に慢性化(C型慢性肝炎)がみられると言われています。さらに初めての感染以降は、症状が出ないことが多く、肝硬変、肝がんといった肝疾患を発症させるリスクが高くなります。そのため、症状がなくてもC型慢性肝炎との診断を受けたら速やかに治療を受けるようにしてください。
治療に関しては、抗ウイルス薬療法(直接作用型抗ウイルス薬内服、ペグインターフェロン、リバビリン など)が行われ、90~100%でウイルス排除が可能です。また、肝炎の進展の予防や沈静化をはかるべく肝庇護薬を使用することもあります。
脂肪肝
脂肪肝とは
脂肪肝とは、肝臓内に中性脂肪(トリグリセライド)が蓄積してしまうことで肝障害が起きてしまうとされる疾患です。原因については、過食や運動不足などで引き起こされる肥満、アルコールの大量摂取、糖尿病などが言われています。
主な症状ですが、自覚症状が現れることは少ないとされています。ただ人によっては疲れやすい、だるい、腹部の違和感などを訴えることもあります。また無症状であっても健診などの結果から、肝機能の状態をみるとされる、GOT値やGPT値の数値に異常がある、中性脂肪値が高いという場合は脂肪肝の発症も考えられます。この場合は詳細な検査(腹部エコー)をして診断をつける必要があります。なお脂肪肝は進行させると肝炎、肝硬変、肝がんの原因となることもあるので早期発見、早期治療が肝心です。
治療に関してですが、アルコールが原因による脂肪肝であれば、肝硬変のリスクも考えられるので禁酒をしてから、生活習慣も改善していきます。またアルコール以外が原因の脂肪肝であれば、まず生活習慣を改善していきます。具体的には食べ過ぎない、栄養バランスがとれた食生活を心がけていきます。そして肝機能が回復傾向になれば、無理をしない運動(息がはずむ程度の有酸素運動)も始めていきます。また糖尿病が原因の脂肪肝であれば、糖尿病の治療を行います。
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)
NASHとは
脂肪肝は、大量のアルコール摂取が原因となることが多いと言われますが、お酒を一滴も飲まない方であっても肥満や生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧)の発症、薬剤(ステロイド 等)を使用するなどして発症することがあります。それらが原因となっている脂肪肝に炎症や肝線維化などが見られている場合をNASH(nonalcoholic steatohepatitis:非アルコール性脂肪肝炎)と言います。
NASHの場合も脂肪肝同様に自覚症状が現れにくいですが、同疾患を進行させてしまうと、食欲不振、だるさ、全身のむくみ、黄疸など肝硬変で見受けられる症状が現れるようになります。つまり、放置のままだと肝硬変、肝がんといった生命に関係する病気を発症することもあるので要注意です。なおNASHの患者様の半数以上の方にメタボリックシンドロームの傾向があるのも特徴です。
治療は主に生活習慣の改善から始めていきます。食事面では、高カロリー食を避け、栄養バランスの良い食事に努めます。またジョギングやウォーキングなど息がはずむくらいの有酸素運動も効果的なので、日常生活に運動を取り入れるようにします。食事や運動だけでは改善が難しい場合は、併せて薬物療法(抗酸化剤 など)も用いるようにします。また生活習慣病が改善されないと肝硬変などに重症化するリスクが高くなるので、これらの治療もしっかり行っていきます。